証券会社で外回りをしていたとき、私のお客様は「個人」ではなく「法人」でした。大企業の資本が入っているグループ会社・子会社が主でしたので、社長さんたちは、「親会社からの出向・転籍組」もしくは「創業者かその血縁者」であることが多かったように思います。

法人としてのお取引に「YES」を言ってもらうためには、決裁権を持つ人が誰なのかを見極め、その人を口説き落とすのが早道でした。これは、どんな時代でも変わらない原理原則じゃないかなぁ。

で、いわゆる「鶴の一声」で決まることが多いのは、「創業者かその血縁者」が社長である、いわゆるオーナー系企業のほうでした。
稟議書にハンコを押して、順番に上げていく・・・という組織に比べると、即断即決! で、結論が早いイメージがあるでしょ? それは、その通りだと思います。

ただし・・・
法人外交時代を思い出してみると、また、オーナー系中小企業の社員を経験してみると、「鶴の一声」には良い面と悪い面の両方があるということにも気づきました。

「鶴」である人の状況判断力が高く、ここぞ!というタイミングでリスクを恐れずに決済できる人なら、(とくに中小企業の場合は、小回りのきく機動力を生かして)新しいことをグググッと推し進める可能性があります。

しかし私のいた会社では、「鶴の一声」が、肝心かなめのときだけでなく、週に2回も3回も発令される・・・つまり、コロコロと方針が変わり、社員たちがそれに翻弄されていました。戦略というより戦術のレベルで、細かい変更が繰り返され、社内調整が終わる頃には担当者がぐったりしている姿を何度も見かけました。残念。

そうかと思えば、リスクを取れずに決断が遅れることもありました。設備投資や雇用を増やすタイミングを見誤り、大きな販売チャンスが来たときに対応できない、とかね(苦笑)。

意外に感じるかもしれませんが、資本力のある大企業のほうが、「ちょっとくらい失敗しても、経営が傾くわけじゃない」という余裕があるため、中小オーナーよりも軽やかに“英断”を下すことができるのかもしれません。

社員としてやっていくなら(あるいは、取引先としてうまく立ち回るときも)、「鶴の一声」をうまいタイミグで発令させたり、ときには聞くふりをして聞き流したり、といった処世術を身に付けないとダメなのかも。

私には、そのへんの才能、あまりないみたいです。